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契約入門ガイド

契約書作成マニュアル【初心者でもできる!】

新しい取引先とは信頼関係をつくることも重要ですが、契約書の締結も欠かせません。
自社に定型の契約書がある取引は良いですが、新規事業では新しい契約書を作成しなければいけないことがよくあります。

そこで、このコラムでは、契約書を作成したことがない人でも、一人で契約書を作成できるように、弁護士が行っている契約書の作成方法(基本)を解説します。ここで解説する作成方法を知っておくと、初めて契約書を作る人でも、スムーズに契約書を作成できるでしょう。
契約書の作成をスムーズに進めるためにも、ぜひ最後まで確認してください。

契約書の役割(合意の内容の明確化と後日の証拠)

「契約」とは、「取引」における合意です。
そして「取引」とは、「物/サービス/情報」と「対価(金銭等)」の交換です。
この取引の合意(契約)は口頭でも成立します。

では、なぜ「契約書」を作成するのでしょうか?
それは、取引の合意内容を明確にし、後日の証拠とするためです。

つまり、口約束はお互いの本音が表に出ず、また証拠にも残りづらいため、トラブルの温床になります。そこで取引の合意を書面(契約書)にすることが重要なのです。

契約書に盛り込む事項

契約書には、取引の合意内容を盛り込みます。

具体的には、一方の当事者が、①いつ、②どこで、③何(「物/サービス/情報」)を、④どのように行うのか、そして、相手の当事者が、⑤いくら(「対価(金銭等)」)を、⑥いつまでに、⑦どのように支払うのかを定めます。

あるべき契約書の作成方法

 契約書ひな型に個別事情を足す

契約書の作成には、契約書ひな型を利用することが一般的です。適切な契約書ひな型を選択し、そのひな型に実際の取引の条件や特殊事情を加えていきます。

 ビジネスの流れの把握

 1.主活動
適切な契約書のひな型を選択し、特殊事情を加えていくためには、ビジネスの流れの把握が重要です。
新しい商品やサービスを販売するビジネスの流れは、次の①~⑤に分けられます。

最初は、①取引前の情報交換から始まります。
次に、②研究開発が行われます。
開発を外部に委託することもあれば、外部と共同開発することもあります。

開発が成功すると、③生産が行われます。製造業の場合は資材の調達も行われます。
そして、④集客・販売が行われます。ここでは営業部門(セールスチーム)が活躍します。

営業が成功すると、お客様との間で商品やサービスの売買や賃貸が行われます。
商品の販売やサービス提供が行われた後、最後に⑤アフターサービスが行われます。

以上、①~⑤は企業にとって主活動と言えます。

2. 支援活動
企業活動には、主活動とは別に、支援活動もあります。主活動が取引先との対外活動が中心であるのに対し、支援活動は主活動を後方支援する、企業の対内的な活動(バックオフィス)が中心と言えるでしょう。

まずa全般管理(インフラストラクチャ)が挙げられます。
具体的には、経営企画、広報、総務、法務、会計等、事業全体に関わる活動です。

人事・労務もあります。

ファイナンス(資金調達)組織再編といった活動もあります。

9種類の契約書の解説

このように主活動支援活動に分けて、ビジネスの流れを把握し、適切な契約書を選択することが重要です。
そこで、これらの主活動と支援活動それぞれで締結されることの多い契約書9種類を紹介します。

主活動で締結されることの多い契約書>
1.秘密保持契約書
2.共同開発契約書
3.売買契約書
4.賃貸借契約書
5.請負契約書(製造委託契約書)
6.ライセンス契約書

主活動支援活動の両方で締結されることの多い契約書>
7.業務委託契約書

支援活動で締結されることの多い契約書>
8.雇用契約書
9.金銭消費貸借契約書

そして、次のように契約書を割り振ると分かりやすいです。

次に、一つ一つの契約書の位置付けを見てみましょう。

秘密保持契約書(NDA)

秘密保持契約(NDA)は、新しい営業先と取引開始前の情報交換(①)を行うために締結する契約書です。

相手から受領した秘密情報を第三者に開示したり、目的外に利用したりしないことを約束する契約書です本格的な取引が始まる前の情報交換のタイミングで取り交わされるものであるため、お互いに相手に過度な期待は禁物です。

〈関連記事〉
【開示者の立場】秘密保持契約書(NDA)のチェックリスト(初心者が1人でも確認できる!)
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共同開発契約書

共同開発契約とは、自社と取引先の双方が、得意とする技術・ノウハウを出し合って、共同して新たな技術や製品の研究開発を行う場合に締結する契約です。

双方が技術・ノウハウを出し合い、成果については共有するというのが基本的な考え方です。

売買契約書

売買契約とは、売主と買主との間でモノやサービスの売買を行う契約 です。

すなわち、モノの提供の対価として金銭が支払われます。モノは不動産、動産に加えて、サービスの売買もあります。 企業活動では、自社の製品を販売(④)することもあれば、原材料を購入する調達(③)目的で売買契約を締結することもありますので、売主・買主いずれの立場になることも考えられます。

賃貸借契約書

賃貸借契約とは、賃貸人が賃借人に対し、ある物を相手方に貸して、相手方が賃料を支払う契約です。

例えば不動産の賃貸借契約の場合、民法や借地借家法等に基づき、賃貸人及び賃借人に様々な権利義務が発生します。借主には「賃料を支払う義務」が、貸主には「使用させる義務」や「必要な修繕を行う義務」等が発生します。
不動産事業で言えば、自社の所有する物件を賃貸に出す活動は集客・販売(④)と言えます。

請負契約書

請負契約とは、業務を受注する者(請負者)が発注された仕事を完成させることを約束し、業務を発注する者(注文者)が完成した仕事の結果に対して報酬を支払う契約です。

例えば、完成品メーカーが部品メーカーに特別仕様の部品の製造を委託する場合には、製造委託契約を締結します。この製造委託契約の本質は、部品の製造の請負契約です。 製造を請け負った部品メーカーは、その部品を完成するという仕事の完成義務を負います。

請負の目的物には、部品や機械のほかにも、家屋の建築、道路の建設、橋りょうの架設、洋服の仕立てのような有形なもののほか、シナリオの作成、音楽の演奏、舞台への出演、講演、機械の保守、建物の清掃のような無形のものも含まれます。

ライセンス契約書

ライセンス契約は、技術、デザイン、ブランド、キャラクター等の無形の財産を開発・製作した会社(ライセンサー)が、それを利用したい会社(ライセンシー)に利用許諾する契約です。

無形の財産は、複製(デッドコピー)が可能であることから、開発・製作会社(ライセンサー)は、事前に特許や商標登録を取得し、自社の権利保護を行っていることが一般的です。利用者(ライセンシー)は、その開発・制作会社の権利に守られながら、優れた技術、デザイン、ブランド、キャラクター等を利用します。

業務委託契約書(開発委託契約書、保守運用契約書、販売委託契約書、等)

業務委託契約は、外部コンサルタント、専門家、フリーランスに特定の業務(仕事)を委託し、その業務に対して対価を支払うことを約束する契約です。

業務の内容は多様で、支援活動である全般管理の場面に及びます。例えば、経営企画であれば経営コンサルティング契約、法務であれば弁護士委任契約、会計であれば、会計監査契約等です。

ただし、主活動の場面で締結される、製造委託契約、開発委託契約、販売委託契約、保守委託契約等も業務委託契約の一種です。このように業務委託契約は業務の範囲に応じて、主活動の場面、支援活動の場面の両方で締結されることがあります。

雇用契約書

雇用契約とは、労働者が使用者のもとで労働に従事し、使用者がこの労働に対して報酬を与える契約をいいます。

正社員や契約社員、アルバイトやパート等の従業員を雇い入れる際に締結する契約です。 雇用契約を締結する場合は、労働基準法や労働契約法等の労働法上のルールが及ぶ点に留意しましょう。

金銭消費貸借契約書

金銭消費貸借契約とは、借主が貸主から金銭を受け取り、これと同額の金銭(元本の他に利息が発生する場合は利息も)を返還する契約です。

新規事業の立ち上げや大規模な設備投資を行う時など、事業用の資金を金融機関等から借り入れることもあるかと存じます。その際、締結する契約です。

リターンを的確に把握する

その取引でどのようなリターンが得られるのかを把握することも重要です。

リターンの大きさは、交渉力にも影響する点に注意が必要です。例えば、中小企業が大企業と取引を行う場合、通常、安定的に大きな仕事を得られるという大きなリターンがあります。そのため、大企業と中小企業との契約交渉では、大企業は、中小企業が得られる大きなリターンの見返りとして、契約条項等の譲歩を強く求めてくるのが通常でしょう。

なお、この際、中小企業は、自社にしか提供できないコアな強みの技術やノウハウがあれば、価格決定力を維持することができます。そのため、中小企業としては。自社のコアな強みやノウハウの保護が極めて重要といえます。

まとめ

以上、契約書を何のために作成するのか、契約書に何を記載すればいいのか、企業活動の各段階で締結されることの多い契約書はどのようなものか等、についてご説明してきました。

自社が今どのような企業活動を行おうとしているのか、企業活動のどの段階にいるのか、を踏まえ、以下の表を参考に、その時点で締結すべき適切な契約書を選択して下さい。契約書を締結する上で重要なことは、単に契約書を締結することそれ自体ではなく、契約書を締結することで自社が得ようとする利益は何かを意識し、相手方と円滑なビジネスを進めつつも自社の核心的利益を守ることです。

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