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秘密保持契約書(NDA)のチェック項目(開示者編)!初心者でもできる!

新しい営業先から情報交換のために秘密保持契約書(NDA)の締結を求められることがよくあります。
相手方がNDA締結を求めてくるということは、新規取引のチャンスです。
しかし、新規取引への期待が裏目に出てしまい、自社のコアな技術情報や営業ノウハウが流出し、開示を強要されないか不安になるものです。

そこで、このコラムでは、経済産業省・中小企業庁の知的財産取引ガイドラインに沿って、NDAのチェック項目を解説します。ここで解説する5項目を知っておくと、初めて契約書を見た方でも、落ちついて相手とスムーズに契約交渉ができるでしょう。
チャンスを取り逃さず、契約交渉をスムーズに進めるためにも、ぜひ最後まで確認してください。

ポイント1:NDAを読む前に確認する事項

秘密保持契約書(NDA)とは

秘密保持契約書(NDA)は、営業先と情報交換し、取引可能性を検討するために、お互いに相手の営業情報の秘密を守ることを約束する契約書です。
当事者間で内容を定めた「秘密情報」について、秘密保持等の義務を負う契約書です。機密保持契約書と呼ばれたり、英語表記のNon Disclosed Agreementの頭文字をとってNDAと呼ばれることもあります。

自社の「コアな強み」を守りつつ、戦略的な事業展開をしていくためにも、NDAの利用場面と自社の立場を理解したうえで、各チェックポイントを確認することが重要です。
そこで、NDAの利用場面と、自社の立場(開示者か、受領者か)を確認しておきましょう。

NDAの利用場面

NDAは、営業先と情報交換を行ったり、取引(共同開発や開発委託を含む)の可能性検討を行ったりする段階で、相手方に限定的であっても自社の強みやケイパビリティを示す上で必要な情報の提供を行う場面で締結される契約書です。つまり、新規取引の候補先との初期段階で、本格的な取引が始まる前に取り交わされることが多い契約書です。

一方、より具体的な技術・ノウハウの開示を伴い、研究開発等が行われる場合や、何らかの成果が発生することが期待される場合には、開示される情報の内容・重要性等も考慮しながら、より具体的な内容を相手と取り決める必要がありますので、NDAではなく、共同開発契約や開発委託契約の締結を検討しましょう。

自社の立場(開示者か受領者か)

秘密保持契約書の目的は、秘密情報の開示者か受領者かどちらの立場かで狙いが真逆になります
つまり、秘密情報の開示者は、秘密情報の受領者に対しては厳格な情報管理を求める必要があります。一度流出した情報は回収することが不可能であるためです。

他方、秘密情報を受領する立場からすれば、相手から受領した情報について、無用な守秘義務を負わないことを明らかにしておきたいということになります。特に、すでに自社にある情報と相手の情報が混在するリスクや、公開情報について守秘義務を負わされるリスクを低減する必要があります。

秘密保持契約書は、この開示者と受領者のそれぞれの狙いを調整するための契約書であると言えます(実際は、双方が開示者であり受領者である場合もありますが、その場合は、主に開示者・受領者いずれの側に立っているかという観点でご検討下さい)。
本記事では、情報の開示者の立場でNDAのチェック項目5点を解説します

〈関連記事〉
秘密情報を受領する立場の場合は
【受領者の立場】秘密保持契約書(NDA)のチェックリスト(初心者が1人でも確認できる!)
をご覧ください。

開示情報と非開示情報の区別

自社の「コアな強み」を守りつつ、戦略的な事業展開をしていくためには、自社のコアな強みとなる技術・ノウハウを不用意に開示・提供して、意図せず技術を流出させてしまわないようにすることが大切です。これはNDAを締結した相手方との関係でも同じです。
そこで、NDA締結に先立ち、貴社の強みの技術とノウハウを次の3つに区別し、管理しましょう。
NDAがあっても、一切開示しない「非開示情報」(極秘情報)
相手にだけ共有する「秘密情報」NDAで守る
公開しても差し支えない情報公開前に特許出願を検討する

①「極秘情報」は、自社の生命線となる最も重要なノウハウであるため、NDAを締結した相手に対しても一切開示してはいけない「非開示情報」です。このような極秘情報はノウハウ開示を拒否できる旨の条項を規定することもお勧めです。

第5条(確認事項)
1~3 (略)
4 甲及び乙は、本契約により、いかなる意味においても相手方に対する秘密情報の開示義務を負うものではないことを確認する。

②「秘密情報」は、やむを得ず営業先にだけ開示する情報です。このような秘密情報は、
NDAで守る必要がある情報です。
上記②の秘密情報については、相手(受領者)に秘密情報であることを知らせる必要があります

③「公開しても差し支えない情報」は、NDAで守る必要のない契約書です。このような情報は、最初に公開する前に特許出願を検討することが望ましいです。なぜなら、一度、技術を公開してしまうとその後の特許取得は難しくなるためです(特許法29条)。

ポイント2:秘密授受の目的

第1条(目的)
甲及び乙は、〇〇の可能性の検討を目的として(以下「本目的」という。)、それぞれ自らの裁量によりに必要と認められる範囲で、相手方に対し、秘密情報(第2条第1項に定義する。)を開示する。

「目的」を定める規定は、相手の受領者が秘密情報を利用できる範囲を定めています。つまり、「本目的」の範囲内での秘密情報の開示や利用は、NDA違反にならないとされていることが多いです。そのため、もし、「本目的」が曖昧な場合、予想外に相手企業が秘密情報を内製化する目的で利用し、又は競合の第三者に秘密を開示して製造委託される恐れがあります。そのようなことがないように、「本目的」の範囲を正しく記載してください。

例えば、NDAの利用場面は、前述した通り、取引の可否の検討に留まることが多く、その後の研究開発や量産の際には、別に委託契約書を締結する必要があります。

そのため、「本目的」としては、上記例文の通り、「〇〇に関する取引開始の可能性」「〇〇に関する共同研究実施の可能性」等の表現を用いることが多いです。なお、この際、「〇〇に関する…」の個所を記載する際に、主語の記載にも注意です。つまり、開示者との取引の可能性や共同研究の実施の可能性を検討するという目的を明確に限定しておきませんと、曲解されて、自社の競合他社との取引の可能性や共同研究実施の可能性を受領者が検討する可能性まで含まれる恐れがあります。

ポイント3:秘密情報の定義

秘密指定の方法

秘密情報については、相手(受領者)に秘密情報であることを知らせる必要があります。秘密情報であることを知らせる方法についての定義の仕方は、次の2つのパターンがあります。

パターン1:情報開示のたびに「CONFIDENTIAL」等と表示して秘密指定する方法

第2条(定義)
1 「秘密情報」とは、甲又は乙が相手方に対し、①秘密である旨を指定して書面又は電磁的方法により開示する情報、②口頭、実演、上映、投影、その他書面又は電磁的情報を提供しない方法で開示する情報であって、当該秘密情報を開示するに際し、秘密である旨を相手方に告知し、かつ、開示後30日以内に、当該情報の内容を取りまとめて秘密である旨を書面により相手方に通知した情報、及び、③交付するサンプル等の有体物であって、交付の際に秘密である旨を書面で通知したものをいう。ただし、以下の各号のいずれかに該当するものを除く。
① 開示される以前に、相手方が知得していたもの
② 開示された時に、すでに公知であったもの
③ 開示した以降に、相手方の帰責事由なく、公知となったもの
④ 相手方が、正当な権利を有する第三者(相手方以外のすべての者をいう。以下も同様。)から守秘義務を負うことなく合法的に取得したもの

この方法の場合、秘密情報を開示するたびに、記録に残るように資料に明記することが必要になり、もし、その記載が漏れると相手(受領者)は、その資料を公開情報(上記③)として自由に利用し、第三者へ開示する恐れが生じます。

パターン2:事前に秘密情報にあたる情報の項目を契約書で明示しておく方法

第2条(定義)
1 「秘密情報」とは、次の各号に定めるものをいう。
(1) 開示者が受領者に対し開示する技術上、営業上その他の業務上の一切の情報のうち、次のいずれかに該当するものをいう。
① 紙、電子媒体等の交付、郵送、電子メールの送信等、提供の媒体及び手段を問わず、開示された情報のうち、秘密である旨の表示がなされたもの
② 本目的のために提供される開示されるサンプル又は製品は、秘密である旨の表示の有無にかかわらず、開示者の秘密情報として取り扱う。
(2) 本契約成立の事実及び本契約の内容、並びに本目的に係る検討及び交渉等の内容
(3) 秘密である旨の明示の有無及び開示方法の如何を問わず、開示者から受領者に対し開示される情報のうち、〇〇の製造方法に関する情報(〇〇の製造の際に用いられる設計図面、〇〇の値のパラメータ情報等を含むが、これに限られない。)
(4) 秘密である旨の明示の有無及び開示方法の如何を問わず、開示者から受領者に対し開示される情報のうち、〇〇の製造装置に関する情報(当該装置の構造、設計情報、使用方法等の情報等を含むが、これに限られない。)
(5) 相手方の施設内において,受領者の役員又は従業員等により,見聞きし,知得し,又は認識された情報の内,秘密である旨の表示の有無にかかわらず,知得時の状況下で,秘密と認識され又は合理的に認識されるべき情報
(6) 〇〇

この方法であれば、情報開示の際に、秘密である旨の表示を忘れたとしても、契約書で事前に明記された項目の情報については、その情報が秘密情報として取り扱われる可能性が高まるため、開示者にとっては有利な方法と言えます。

※ただし、「ポイント1(3)開示情報と非開示情報の区別」で説明した通り、開示者は、開示する情報について、秘密性の有る情報と公開情報とを区別し、整理しておくことが重要である点に替わりはありませんので、注意しましょう。

秘密情報の例外

ただし、以下の各号のいずれかに該当するものを除く。
① 開示される以前に、相手方が知得していたもの
② 開示された時に、すでに公知であったもの
③ 開示した以降に、相手方の帰責事由なく、公知となったもの
④ 相手方が、正当な権利を有する第三者(相手方以外のすべての者をいう。以下も同様。)から守秘義務を負うことなく合法的に取得したもの

開示者が秘密指定した情報であっても、すでに相手が知得していた情報や公知になっている情報まで、秘密情報として扱うのは受領者に過度な守秘義務を課すことになり、不適切です。そこで、これらの情報は、例外として秘密情報に当たらないことを定めることが一般的です。

ポイント4:秘密保持義務

第3条(秘密保持義務)
1 受領者は、本目的のために開示者から開示された秘密情報、並びに、開示者と本目的に係る検討、交渉を行っている事実及び本契約の存在を、厳に秘密として保持し、開示者による事前の書面承諾を得ない限り、第三者に対して、開示又は漏えいしてはならず、また、開示者による事前の書面承諾を得ない限り、秘密情報を本目的以外のために用いてはならない
2 受領者は、自己の役員又は従業員のうち本目的のために秘密情報を知る必要がある者に対し、本目的のために必要な範囲内でのみ、秘密情報を開示することができる

開示禁止と目的外利用禁止

秘密保持義務の内容として、次の2つの禁止事項として明記する必要があります。上記経済産業省・中小企業庁の知財取引ガイドラインのひな型の条項でも、この2つの禁止を盛り込んでいます。
(1)第三者への開示禁止(1項前半、2項)
(2)目的外使用禁止(1項後半)

双方の守秘が原則

ここで重要なチェックポイントはお互いが秘密保持義務を負う内容になっていることの確認です。時々、「受領者は…」との記載ではなく、「乙は…」と記載されていることがあります。この場合、一方当事者(「乙」)のみが義務を負う内容となりますが、原則として、一方当事者のみが秘密保持義務を負う内容は推奨されません。なぜなら、もし、貴社だけが秘密保持義務を負う場合、秘密情報を相手(受領者)が自由に利用し、第三者へ開示してしまう恐れがあるためです。

NDAと秘密保持誓約書(片務)の違い

NDAと似た書面に、秘密保持誓約書があります。秘密保持誓約書は、一方当事者のみが秘密保持義務を誓約する書面です。そのため、秘密保持誓約書を提出するだけでは、自社のノウハウの守秘義務を相手に課すことはできません。もし、自社のノウハウを相手に開示するときは、秘密保持誓約書を提出するだけでは不十分ですので、双方が守秘義務を負う秘密保持契約書を締結するようにしましょう。

ポイント5:秘密保持期間

第9条(有効期間)
1 本契約は、本契約締結日から〇年間 、有効に存続する。
2 前項の規定にかかわらず、本契約の終了後においても、本契約の有効期間中に開示等された秘密情報については、本契約の終了日から〇〇年間、本契約の規定(本条第1項を除く。)が有効に適用されるものとする

秘密保持契約書では、契約の有効期間はとても重要です。次の2つの点を確認しましょう。

(1)秘密保持期間が適切な長さであるか。

自社の秘密情報を守るために十分な長さの期間を、有効期間として定める必要があります(上記1項)。なぜなら、その期間を過ぎた後は、原則として、相手(受領者)に守秘義務がなくなり、相手が秘密情報を自由に利用し、第三者へ開示できてしまうためです。できるだけ長くという観点からは5年間程度が想定されますが、相手方の反発も想定されますので、目的を達せる範囲で期間を定めて下さい。

例外的に残存条項を設けた場合(上記2項)、その残存期間までは守秘義務が継続します。この残存期間も活用し、秘密情報を適切な期間保護しましょう。なお、上のひな形では、残存する条項が「本契約の規定(本条第1項を除く。)」とありますが、具体的な秘密保持義務を定めた条項(○○条)が明記されることも多いです。

(2)秘密を開示する全期間を含むか

NDAの契約の有効期間は、秘密情報の枠を定める役割をしていることが多いです。つまり、契約の有効期間が始まる前や終了した後に開示した情報は、たとえ秘密情報であったとしても秘密情報として扱われないリスクがあります。そのため、自社の秘密情報を開示する全期間が契約の有効期間に含まれるように定めましょう。

その他の注意点

知的財産権の取り扱い

第4条(知的財産権)
1 甲及び乙はいずれも、相手方の秘密情報に依拠して、発明、考案、著作物その他の知的財産権の目的となるもの(以下「発明等」と総称する。)を得た場合には、相手方に対し速やかに通知し、また、当該発明等に関する知的財産権の帰属及び取扱いを別途甲乙間で協議のうえ決定するものとする。
2 次の各号のいずれかに該当する発明等に係る知的財産権は、その発明等をなした当事者に単独で帰属するものとする。
(1) 各当事者が本契約締結日前から保有するもの。
(2) 各当事者が、本目的を遂行する過程で、相手方から提供された秘密情報に依拠せずに独自に創出又は取得したもの。

上記のような知的財産の取り扱い規定がNDAで設けられることがあります。
しかし、NDA締結は取引の前段階であることが多く、その場合、知的財産の取り扱いを削除することも一案です。また、仮に設けるとしても上記のサンプル文のように、発明の特許を受ける権利が発明者から他の当事者に移転するような規定とすることは避けるべきです。

もし、何らかの成果の発生や特許権等の権利の移転が想定されるような取り組みを行う場合には、共同開発契約や開発委託契約等を締結することが推奨されます。

権利の不移転、実施権の不許諾

第5条(確認事項)
1 開示者から受領者に開示された秘密情報に係る一切の権利及び利益は、開示者に帰属するものとし、受領者に対する秘密情報の開示により、知的財産権その他一切の権利及び利益が受領者に譲渡されるものではなく、また、実施許諾、使用許諾その他いかなる権限も受領者に与えられるものではない。

NDA締結は取引の前段階であることが多く、秘密情報に関する権利が譲渡されたり、実施権が許諾されたりするものではないことが一般的です。そのため例文のように権利の不移転や実施権の不許諾等を確認する規定を設けることが知的財産取引ガイドラインでは例示されています。

次の段階(将来の契約)への移行の不約束

第5条(確認事項)
1 (略)
2 甲及び乙は、本契約が、本目的を遂行するに際して当事者間で開示される秘密情報の取扱いにつき定めるものであって、当事者間における物品の売買、役務の提供若しくはこれらの予約その他いかなる取引又は本契約に定めのない事項を約定するものではないことを確認する。

NDA締結は取引の可能性を検討する段階であることが多く、その後に本格的な取引に進むか否かは未定のことが多いです。そのため例文のように次の段階(将来の契約)への移行の義務が無いことを確認する規定を設けることが知的財産取引ガイドラインでは例示されています。

情報の正確性等の保証/非保証

第5条(確認事項)
1 (略)
2 (略)
3 甲及び乙はいずれも、自己を開示者とする秘密情報について、正確性、有効性、安全性、特定の目的への適合性又は知的財産権の非侵害その他いかなる事項についても何ら責任を負わない。

NDA締結は取引の前段階であることが多く、対価の発生や権利の移転等を伴わないことが前提となっていることが一般的です。そのため、例文のように、開示者は、開示した情報の正確性等の保証が無いことを確認する規定を設けることが知的財産取引ガイドラインでは例示されています。

リバースエンジニアリング禁止

第〇状(リバースエンジニアリング等の分析禁止)
甲及び乙は、秘密情報について、相手方の事前の書面による同意なく、リバースエンジニアリングその他一切の分析、解析及びこれらに類似の行為を行ってはならない。

秘密情報が分析されて、極秘のノウハウが暴かれることがないように、受領者に秘密情報のリバースエンジニアリング等の禁止を定める規定を設けることがあります。

ただし、NDA段階で、このような受領者側に強い禁止規定を設けることは不適切なことがあります。
そもそも、NDA締結は取引の前段階であることが多く、対価の発生や権利の移転等を伴わないことが前提となっていることが一般的であるため、分析により極秘情報が暴かれるリスクのある情報は、相手に開示しないことが推奨されます。

競業避止義務

第〇条(競合禁止)
甲及び乙は、本契約有効期間中及び本契約終了後〇年間、日本国内外において、独自に又は第三者との間で、本契約の目的と同一又は極めて密接に関連するテーマの開発、製造及び販売する製品の開発、製造及び販売等(以下「競合行為等」という。)を一切行わないものとし、自己の役員、従業員もしくはそれらの親族又は関連会社等に、競合行為等を一切行わせないものとする。

相手がNDAに違反して受領した秘密情報を目的外利用したり、第三者へ開示したりしても、その事実の証明が難しいことがあります。そこで、例文のように、受領者に同一・類似の目的の取引の検討等を他社と行うことを禁止する規定を設けることがあります。

ただし、NDA段階で、このような受領者側に強い禁止規定を設けることは不適切なことがあります。
そこで、競合他社に流出した場合に、自社のコアな強みを侵害されるリスクが生じる情報は、相手に開示しないことが推奨されます。

違反時の保護(損害賠償、差止め)

第7条(損害賠償義務)
甲及び乙は、本契約に違反して、相手方に損害を与えた場合には、相手方に対し、損害(相手方の弁護士費用を含む。)の賠償をしなければならない。第8条(差止め)
甲及び乙は、相手方が、本契約に違反し、又は違反するおそれがある場合には、その差止め、又はその差止めに係る仮の地位を定める仮処分を申し立てることができるものとする。

相手がNDAに違反して受領した秘密情報を目的外利用したり、第三者へ開示したりした場合に、違反者に対して損害賠償請求や差止め請求を行いやすくするために、知的財産取引ガイドラインでは、違反者に対する損害賠償請求権(第7条)や開示者による差止請求権(8条)を定める規定が例示されています。

ただし、上記のような例文の定めがなくても、NDA違反の場合には、営業秘密を侵害する不正競争行為にあたるものとして違反者に対する損害賠償請求(民法709条、不正競争防止法4条)や差止請求権(不正競争防止法3条)が認められることも多いと解されるため、上記各規定を設ける必要性は比較的低いとも言えます。

まとめ

今回は、秘密情報の【開示者の立場】から、以下のNDAのチェック項目5点を説しました。

ポイント1:次の3つの情報(①~③)の区別、管理が社内で徹底されているか
......①秘密保持契約があっても、一切開示しない「社外秘」情報
......②特定の相手にだけ共有しても構わない情報(契約書で守る)
......③一般に公開しても差し支えない情報(公開前に特許出願を検討する)
ポイント2:秘密を開示する「目的」は明確に記載したか
ポイント3:秘密情報の定義(情報開示のたびに、秘密指定が必要か)を定義したか
ポイント4:秘密保持義務(開示禁止と目的外利用禁止)は双方義務を負うか
ポイント5:秘密保持期間は適切な長さであるか

結局のところ、自社のコアな強みとなる技術やビジネスノウハウを守るためには、NDAを締結したとしても、相手に不用意に情報を開示・提供しないということが最も重要であることがお分かりいただけたと思います。特に、NDAは取引の初期段階で締結されることが多い契約書であるため、NDAに過度に期待し、自社の秘密管理を緩めることは禁物です。

逆に、このような秘密管理を徹底されているのであれば、NDAの他の条項に過度に拘ることは得策ではなく、譲歩できる条件は譲歩して、新規取引のチャンスを是非、成功させましょう。

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